食育って具体的にどんなことを教育していくのでしょう。
食への興味は、子どもによっても差が大きく、食べることが生きがいのようにとても興味を示す子もいれば、食べることに全く興味がない子もいます。
どんな子もそれぞれ自分のペースや興味が向く時が来るので、焦らずゆっくり取り組んでいきましょう。
ここでは、年齢別に見る食育のねらいや目標・食育におすすめの絵本・幼稚園での取り組みなどをご紹介していきます。
もくじ
食育とは
食育とは、政府の広報によると「いろいろな経験を通じて、「食」に関する知識と、バランスの良い「食」を選択する力を身につけ、健全な食生活を実践できる力を育てること」とあります。
つまり、大きく言うと「食を通して生きる力を身につけよう」と言う意味があるのです。
日本で食育を大切にしているのは、現在、食生活の変化や多様化による生活習慣病にかかる人が増加しています。
これは、大人だけでなく幼児期の子どもにとっても身近なものとなっているのです。
小児肥満は増え続け、生活習慣病の代表格である糖尿病や高血圧の子どもがとても多いのです。
また、家庭内でも両親や兄弟などの仕事や生活時間のズレから、幼児の子どもが一人でご飯を食べていたり、大人と同じような簡単なインスタントや飲み物だけという「孤食」が問題となっています。
こうした、子どもたちの食習慣を正していくために「食育」が推進されるようになりました。
年齢別に見る食育のねらい
厚生労働省では、年齢別の食育のねらいを明記しています。
乳幼児期は、脳も体も毎日成長していく大事な時期ですので、年齢に合った適切な食育を行なっていきましょう。
<3歳>
3歳になると、みんなで食事をすることを楽しめるようになってきます。
先生やお友達、家族と一緒にご飯を食べることに楽しみや喜びを持ち、食事の感想を言ったり、自分が家庭で食べたものを伝えてきたりします。
自分で食事を楽しめるようになってきたら、食事のときのマナーを教えていくことが大切です。
食事の前には手を洗っていただきますということ、食べ終わったらごちそうさまでしたというなど、簡単な挨拶や食事の時間を習慣的に教えていくことで身についていきます。
<4歳>
4歳では、食べ物の栄養についてや健康について興味を持てるようになってきます。
幼稚園では、食の栄養やバランスについて、絵本や行事の食べ物などを通して教えていきます。
この時期は、お菓子にとても興味を示して、ご飯よりお菓子ばかりを食べたがります。
野菜やいつもみんなが食べている食事には、お菓子にはない体を強くする栄養がいっぱいあることを、分かりやすく伝えることによって、食への興味を示しやすくなるでしょう。
苦手な食べ物にも挑戦してみたり、色んな食べ物やその種類があることを知れるような食育を行なっていきましょう。
<5歳>
5歳は、いのちの育ちと食への感謝の気持ちを持って食事するようになります。
自然の恵みや働く大切さを知り、幼稚園の畑などでじゃがいもやさつまいもを育てる経験などを通して、いのちを大切さを知る心が育ちます。
自然との関わりを多く持つことで、食材がどうやって作られて自分が食べるまでに至るのかを知り、いのちをいただいているという感覚を養うことができます。
バランスの良い食事と、健康的な食生活を送るためにはどうすれば良いのか、自分自身で考えて行動できる力を食育を通して育てたいですね。
楽しく食べるポイント
食事のマナーって幼児期にしっかりやっておかないと、大人になっても食べ方が汚かったり、マナーが悪い人がいるから・・・と思って、ビシバシ食育をしようと考えているママさん。
食事こそ「楽しく」が一番大切なんですよ。
食育は、周りと比べることなくその子のペースや性格に合わせて楽しく、焦らず毎日コツコツ行なっていきましょう。
何より、大人であるママや先生が楽しそうに美味しそうに食事をしている姿を見せることで、子どもにも食事が楽しいということが伝わります。
生活リズムを整える
毎日、美味しく楽しく食事をするためには、まず基本的生活リズムをしっかり整えましょう。
幼児期の子どもはまだ自分で生活リズムを作ることが難しいです。
そのため、大人が毎日同じリズムで生活の習慣を身につけさせてあげることが一番大切です。
「早寝・早起き・朝ごはん」が推奨されているように、規則正しい生活は1日3食の食事をより美味しく・お腹いっぱいに食べるための基本です。
正しい生活リズムで生活することは、脳の活性化にとっても効果的と言われています。
朝ごはんについては、ただ何か食べれば良いのではなく、バランスの取れた食事をよく噛んで食べることで、1日の活動も快活に、元気いっぱい遊ぶことができます。
食事バランス
幼稚園では、お昼ご飯はお弁当と給食のところがありますが、給食の場合は子どもたちの健康と栄養をよく考えて作られているバランスの良い食事が提供されます。
お弁当の場合は、どうしても子どもが好きなものばかりになったり、揚げ物や冷凍食品だけになってしまってませんか。
食事バランスの基本は主食・副菜・主菜が揃っていることです。
バランスの良い食事は、体だけでなく心を元気にする働きもありますので、朝・昼・晩ともに、栄養と食事のバランスをしっかり整えてパワーをつけましょう。
おやつ
子どもたちがみんな大好きなおやつはどうすれば良いのでしょう。
食育としては、おやつは子どもにとって大切な栄養補給のひとつでもあります。
食べてはいけないわけではありませんが、1日に食べていい回数と時間をしっかり決めて、それを守ることが大事です。
ご飯の前や後はもちろんNGですが、栄養のあるおやつを子どもと一緒に手作りしたりすれば、お菓子代が浮きますし、調理する楽しさやお手伝いを知るきっかけにもなりますね。
好き嫌い
2〜3歳ごろになると、食べ物の好き嫌いが出てきます。
好き嫌いが出てくるのは、味覚が発達していることと、子どもの自我が確立して意思がはっきりできるようになるためと考えられています。
ですので、大人にとっては困ったことですが、子どもはきちんと成長している証拠だと思って向き合いましょう。
好き嫌いは、無理やり食べさせようとしたり、厳しくしても変わるものではありません。
年齢に応じて調理のときに細かくして混ぜたり、色んな工夫を凝らすことで好きになれる場合がたくさんあります。
焦ったり、無理強いして行わずに「楽しく」根気強く食事をしていきましょう。
食べる力を育てる
生きる力とはよく聞きますが、食べる力とはどんなことを意味するのでしょうか。
食事に関して色んな方面から食への関心を養っていくことです。
家族や友達と食卓を囲んで楽しく食べること、1日3食しっかり食べること、ママと一緒にお買い物に行って、色んな食材に触れること、伝統行事の食事を知ること。
食に関して子どもが興味を持てる場面はたくさんあるのです。
生きることは食べることと言うように、各年齢に応じた目標とねらいを通して食への興味を深めていきましょう。
子ども自身が楽しいという気持ちを持って、食事をしたり食材に興味を持てるようになることが一番大切ですよ。
食べ物のルーツを知る
年齢別の食育のねらいのところでも少し触れましたが、私たちが食べているものはどこからきているのか、そのルーツを知ることで食べ物の大切さを学びます。
幼稚園では、園に畑があったり近くの畑などで野菜を育てているというところも多いはずです。
これは立派な食育活動の一つです。
私たちのところに食べ物が届くまでには、多くの人たちの手によって支えられているということ、食材が種から食べられるようになるまでにはたくさんの時間がかかっていることを、子どもたちが自分の目で確かめて知ることは、食への興味を深めるのに、とても良い機会となります。
実際に、自分たちの手で苗を植えたり、収穫作業をすることで、より一層食べ物に感謝をする気持ちが生まれ、自分で採った食材への愛着が湧いて美味しさも2倍になりますね。
このような経験を幼児期に行うことで、いのちの恵みに感謝して残さずご飯を食べられるようになります。
食育に関するおすすめ絵本
子どもに食に興味を持ってもらうために、最も親しみやすいのが絵本です。
食に関する絵本はたくさんありますよね。
様々な目的に合わせて、絵本を通して食事への関心を深められるような読み聞かせをしてみましょう。
食べ物を大切にする心を養う絵本
食べ物を粗末にしない、大切にするという心を持たせることは、とても大切なことです。
どんな食べ物も大切にするという心が育つことで嫌いなものは無駄にしても良いのではなく、何でも食べるようになります。
『いただきまーす』二宮由紀子/著 荒井良二/絵
毎日食べているものが食材そのままの形だったらどうする?と問いかけています。
それぞれの食べ物はみんな、いのちあるものを食べているということを分かりやすく教えてくれる一冊です。
いのちをいただくから「いただきます」なのだということを、荒井良二さんの愉快な絵で楽しく描かれています。
『やさい』平山和子/作・絵
平山和子さんの絵本の特徴は何と言っても、リアルな絵タッチです。
思わず絵本に手を伸ばして野菜を取りそうになってしまうほど、リアルに近い絵が大人気となっています。
色んな野菜の畑の姿と八百屋さんに並んだ姿が描かれていて、野菜の名前や色を覚えるのにピッタリです。
文章は少なく、絵を見て子どもが色んな想像を掻き立てたり、感想を持つことができる一冊です。
好き嫌いをなくす絵本
子どもの好き嫌いは、親にとってはなんとも厄介ですよね。
食べさせたいけど「いやいや」の一点張りの日々。。
そんなときは、怒ってばかりでなく絵本の力を借りましょう。
子どもたちが大好きな絵本には、嫌いなものや苦手なものを食べるとかっこよくなれる・強くなれる・かわいくなれるというような、子どもの興味をそそるものが多いです。
『やさいのおしゃべり』
きゅうりが嫌いなれいちゃんが冷蔵庫の前を通ると何やら声が聞こえてきました。
冷蔵庫の中では、やさいたちが秘密のおしゃべりをしていました。
捨てられそうな子、腐るまで放置されてる子、何年もずっといる子など、冷蔵庫の中には色んなかわいそうなお友達がいるようです。
野菜だって生きているので、食べてもらえることはとっても嬉しいのです。
食べることに喜びを持って、感謝の気持ちを持つことを教えてくれる一冊となっています。
『ぜったいたべないからね』ローレンチャイルド/作
食べ物の好き嫌いは世界共通です。
お兄ちゃんのチャーリーは妹のローラにご飯を食べさせるけど、ローラは嫌いなものは嫌いとの一点張りで全く受け付けない手強い子なのです。
そこでチャーリーは、食べ物に色んな面白い名前をつけてローラに与えてみると、ローラは少しずつ食べてみようかなと口にしてくれるようになります。
イギリス発の大人気絵本として有名な一冊です。
兄妹のリアルな会話と、妹ローラの頑固っぷりには、読んでいる大人も思わず笑っちゃいます。
食事のマナーを学べる絵本
食事を楽しくできるようになったら気になってくるのが、食事のマナーです。
美味しく・楽しく食事をするのは良いことですが、食前・食後のごあいさつや食べ方など最低限のマナーはできるようにならなければなりませんよね。
絵本の読み聞かせでは、絵本の中のキャラクターたちの姿を通してマナーを教えることができます。
『いただきます』きむらゆういち/作・絵
1歳〜2歳に大人気の絵本です。
動物たちが大きなお口を開けて、元気よくいただきますとご挨拶している内容の繰り返しによって、いただきますを言う習慣を身につけることに役立ちそうですね。
一緒にいただきますと言う練習をしながら、どの動物が一番の食いしん坊かな?と考えながら読むと楽しいです。
持ち運びにもちょうど良いサイズなので、お出かけ先でも食事のマナーを身につけながら絵本も楽しく読めて一石二鳥ですね。
『しろくまちゃんのほっとけーき』わかやまけん
みんなが大好きで馴染みのあるしろくまちゃんシリーズです。
しろくまちゃんが一所懸命にほっとけーき作りをお手伝いしている様子や、出来上がって喜んでいる様子に、子どもたちも一緒になってワクワク気分になります。
ホットケーキや焼けるまでが描かれたページは、見ているとなんだかお腹が空いてきちゃいます。
シンプルな内容ながらも、自分で作って食べるのは美味しいというしろくまちゃんの体験を通して、お料理に興味を持ったり、自分で何か作ってみたくなるような気持ちを育てることができます。
幼稚園での食育の取り組み
各幼稚園では、食育に関して様々な取り組みが行われています。
食への興味を持ち、深めていくことはこれからの長い人生を生きる上で大切なことです。
園によって取り組み方や力を入れている箇所は異なりますが、ここでは幼稚園でよく行われている食育についてご紹介していきます。
まずは、園に給食センターや給食室が併設されているところだと、子どもたちが給食を作っている様子を自由に観察できるようになっていたりします。
いつも美味しい給食を作ってくれる人たちが、一所懸命に働いている姿を見る・知るということは、とても大切なことですね。
また、年中さんから給食当番を設けて、小学校のように自分たちでお皿に取り分けて配膳するようにしている園もあります。
子どもにやらせるのはちょっと時間がかかるし・・・と思ってしまいますが、給食当番があることで、人数分をきちんと足りなくならないように分けるにはどうすれば良いかなどを考えて配らなければならないので、子どもはとっても頭を使って仕事をこなします。
こぼしてしまっても、ひっくり返しても、何でも経験です。
先生のご飯がほんのちょびっとしか残ってない・・・なんてこともよくありました。
お誕生日会で多いのは、誕生日会の日はみんなでお料理クッキングとしてお菓子を作ったり、お団子を丸めたりとクッキングをします。
自分たちの手で作るお菓子はとっても美味しいし、何より自分で作ったという経験が子どもを大きく成長させてくれます。
ほんのちょっとの作業でも、こんなに美味しい料理に変身するんだと知ることで、料理に関心を持つきっかけにもなりますね。
最後に、園の農園や畑で野菜などを栽培して、収穫したものをみんなで食べたり、家庭で調理して食べるという取り組みです。
園によって育てているものは違えども、種から毎日お水をあげて丁寧に育てると、やがて芽が出て花が咲いて実がなって食べれるようになる。
この過程を知ることも大切ですし、自分の手元に食べ物として出来上がるまでにこんな工程をたどって、時間がかかっているんだということを知ることで、大切に食べようという感謝の心が育ちます。
出来上がっているすぐに食べれる食べ物ばかりを見慣れがちですが、どうやってできているのかを知ることって、とっても大切な学びの一つです。
まとめ
幼児期の食育ってこんなにも大事なのですね。
生まれてから色んな経験をして、食に対しても様々な知識を学び、分かることが増えてくるにつれて、好きなものばかりを食べるようになったり、苦手意識の芽生えから、生活習慣病に繋がる原因を作ってしまいかねません。
だからこそ、楽しく食育をしていくために絵本を通して教えることは、とても効果的です。
子どもの意識ってちょっとしたことで、コロッと変わったりするものなので、読み聞かせをするときは、美味しそうに・楽しそうに表情豊かにすると、子どもはより食の世界に引き込まれていきます。
楽しく・美味しく・無理せずを意識して、食育に取り組んでくださいね。